日本の「水」を追う。ウォーターフットプリント
気象庁の検討会で2022年の猛暑が「異常な状態だった」との見解が示されたことはご存知でしょうか。各地で35度を超える日が続き、残暑も例年より長く続き、大きな台風もありました。この異常気象の原因は太平洋高気圧の勢力等が関係しているとのことです。年々猛暑や大雨などの異常気象を経験しているようにも感じますがこれは日本だけでなく世界中で発生しています。
イギリスのロンドンでは「干ばつ宣言」が出され、庭の水やりや洗車など大量の水を使用する水道ホースの利用が禁止となりました。
その一方で韓国では大雨で街中に水があふれてしまい、都市機能が遮断されるということもありました。
発生している事象は「干ばつ」と「大雨」という真逆の現象ですが、どちらも例年よりも発生回数が増えた異常気象です。日本でも今夏は雷雨や大雨が各地で発生しました。 今の日本は温帯気候(温暖湿潤気候)に位置し季節の移り変わりがありますが、地球温暖化の影響により今後は亜熱帯気候となる可能性も示唆されています。 日本にいると実感することが少ないかもしれませんが、世界を見渡すと異常気象による干ばつや水質汚染等の問題を抱えている国や地域がたくさんあります。実はこうした世界各国の水環境に日本も大きく関わっているのです。 今回は水を辿っていく「ウォーターフットプリント」について焦点を当てていきたいと思います。
ウォーターフットプリントとは?
「ウォーターフットプリント」はモノやサービスを消費する過程で使用された水の総量を図り水環境への影響を評価する概念です。
水消費量だけでなく水消費地についても分析しており、文字通り水のフットプリント(=足跡)を辿り「どこで」「どれだけ」の水がどのように使われたのかという情報を示す試みです。
例えば私たちの着ている服や、今このページを読んでいる媒体のパソコンやスマートフォンの製造にはどれだけの水が使われているのか、またどれだけの水を汚染しているのかを把握します。そうすることで製品やサービスの裏側にある水の消費量や汚染度合などが見える化され、企業や消費者が水の使われ方を把握し、環境負担への配慮や持続可能な水資源の利用方法の促進などに繋げることが期待できます。
ウォーターフットプリントの概念は2009年にISOによって国際規格化され、環境負担を削減するための原材料の栽培・生産から製造や加工・輸送・廃棄といった商品のサイクルを包括的に見て誰でもわかる基準の開発が進められています。
水問題を解決する3つの分類
ウォーターフットプリントは3つの種類に分けられ、どのように水が使用されているのかによって区別します。
- グリーン・ウォーターフットプリント
- ブルー・ウォーターフットプリント
- グレー・ウォーターフットプリント
土壌に貯められ、植物を通して蒸発するという降水・土壌水に関するもの。農業や園芸、森林材に関係します。
商品の製造で使用されたり、人の体に入ったりする地上及び地下水(河川水)に関するもの。灌漑農業や産業、家庭での水利用に関係します。
家庭雑排水などの汚染された水を特定の水質に戻すために必要な水に関するもの。下水管を通って直接廃棄される排水や土壌で濾過されながら間接的に浄水される排水などと関係します。
1つの製品にどの種類の水がどれだけ使用されているのか、ウォーターフットプリントネットワークでは可視化して表示をしています。また同サイトでは世界の水危機を解決するための活動報告の掲載もしています。
世界の水と日本の関わり
ではなぜ今ウォーターフットプリントなのか。それは世界の水資源問題が関係しています。人間や動植物の生命維持に欠かせない淡水は地球上で2.5%しかありません。そしてそのほとんどは氷河や万年雪、汲上げられないほどの地下水などで実際に利用できるのは0.01%にしかならないのです。 UNESCO(国際連合教育科学文化機関)によると2030年には世界人口の47%が水不足になると危惧されており、今後の各企業の対策がどのようになるのか動向が気になるところです。不足する主な理由としては人口増加とそれにともなう水質汚染、そして日照りや干ばつによる水資源不足です。 先にも述べたように、ウォーターフットプリントは1つの製品が作られるまでの水の流れを知ることを目的としています。私たちの目に見える範囲の飲料用水は日本国内で生産から後処理まで賄われています(一部輸入飲料水を除いて)。
日本も例外ではない!地球規模の「水不足問題」
では日本が海外で生産し、輸入している食品や衣料品などの生産過程で使用されている水についてみていきましょう。
日本のウォーターフットプリントを見てみると繊維や畜産の生産において多くの割合を占めていることが分かります。
WWFが日本のウォーターフットプリントについて計算をした一覧を公開しています。
農産物・畜産、繊維の分野でそれぞれに種類分けとその量、国別の割合に分けて公開しています。
畜産物においては家畜が飲む水や餌となる穀物を生産する際に使用する水においてもウォーターフットプリントが発生し、繊維の場合はコットンや羊毛などの生産段階と繊維の脱色プリントなどの加工段階で使用される水が含まれます。
日本にある製品は雑貨から食べ物に至るまで輸入に頼っている部分が多くあります。
ということは、私たちは生活をするために海外の水環境に頼らないといけない、という事になります。水は限られた貴重な資源です。今後は一人ひとりそして国単位で考えるべき課題になっていくのではないでしょうか。
私たちの知らない間に海外の水を汚染している可能性も大いにあり、ウォーターフットプリントを知ることで水の流れに目を向けて、地球全体の水環境を保全していく上で果たすべき責任を考えるきっかけとすることが大切です。
限りある資源の水
実は世界では水を巡る「水紛争」が各地で発生しています。例えばインド・パキスタン間でインダス川の水の所有権争いやナイル川ではエジプト・スーダン・エチオピアの3国間でダム建設と水配分についての争いが起きています。世界の人口増加による水不足、異常気象による降水量の変化、地球温暖化による水源の干ばつなどが関係しています。日本は島国で海に囲まれているために水紛争に馴染みが無く、普段の生活で水に困ることもありません。蛇口をひねると水が出てきますし、上水と下水の区別がされて、飲料用水がありとても恵まれています。ただ地球規模で見てみると、水も限りある資源であるということは変わりありません。地球環境を考えることは水を考えることから始めることもできるのではないでしょうか。
ノベルティでもできること。
まずはできることを考えてみる
地球環境を考え、環境負担の少ない有機栽培の商品を選ぶことやゴミの削減を心がけることも実は水のことを考えるうちの1つです。また、普段何気なく使っている製品がどこで作られているのかに興味を持つことも地球環境や水問題への取り組みの1つで、使い捨てではなく長く繰り返し使える商品を選ぶことも私たちにできるエコな取り組みです。
既にレジ袋の有料化でエコバックは持つ方が増えています。レジ袋以外でも必要な時に買うペットボトル飲料やドリンクカップは私たちの生活にとって非常に便利ですが、繰り返し利用可能なマイボトルやタンブラーを使うことで、プラスチックごみ削減ができます。
当社では洗って何度も使えるマイボトルやタンブラー、エコバッグを多数取り揃えており企業のノベルティ制作のお手伝いをしております。世界の水を考えそして地球環境を考え、まずはできることから探してみませんか。